act.26『おもちゃのチャチャチャ』『おもちゃのチャチャチャ』おいらがこのおうちに来てから2ヶ月が過ぎた。 おいらの毛はぽわぽわの綿毛のようだったのが、だんだん艶を帯びた素敵な毛皮になってきた。 最近、おいらのおもちゃが増えた。 おいらの一番のお気に入りのおもちゃは、ママが、小さくなった桃の靴下をクルクルって丸めたものだ。 おいらはそれを前足ではじいてボールのように転がしたり、じゃれてペイって上に放り上げてまた受け止めたりできる。 でもね。 おいらが一番得意なのは、ママが丸めた靴下を、びゅ~んと投げたのを空中キャッチすることだよ。 それでね。 も一回投げてって、ママのところに、にゃ~んってもっていけるんだよ。 ママは大喜びで、 『すごいよこにゃん。まるで犬みたいね!』だって。 おいら猫だってば。 あそこに桃の小さい小さいボールが転がっているよ。 スーパーボールっていうんだって、 桃が床にえいって投げると、びょ~んって高く高く飛ぶボールなんだ。 小さいけど、すごい奴さ。 おいらが咥えるとちょうどいい大きさ。 おいらね。 そのボールを持っておうちの階段を上がっていくの。 そいでね。 おいらね。 階段の一番てっぺんでボールからお口を離すんだよ。 するとボールは、 とんと~んと~~んと~~~ん!って、 だんだん高く飛び上がりながら、階段をどんどん降りていくんだよ。 おいら、そのあとを追っかけながら一緒にジャンプするんだ。 ぴょんぴょ~んぴょ~~~ん!って。 それを捕まえるのはとっても難しいんだよ。 おいらボールが転がりだしたところでやっと捕まえた。 そいでまたボールを咥えて階段を上がるんだ。 この前桃とスーパーボールで遊んだよ。 桃が、 『行くよ~こにゃんっ!』って。 おいらは階段の下でうずうず待っていた。 そしたらね。 桃ってば、あるったけのスーパーボールを落としてきたんだよ。 ダンダ~ンダ~~ンダ~~~ン!!って。 赤や黄色や緑や青や紫に橙に・・・いろんな大きさのスーパーボールが、何十個もおいらのほうに踊りながらやって来るんだよ。 それはもう雷みたいに大きな音だったよ。 おいらシッポを大きくして、あわててママのところへ逃げ出した。 桃と遊ぶときは要注意だ。 怖くなんてないけどね。 普通の猫おもちゃは、おいらあんまり好きじゃない。 みんなで遊べるのが好きなんだ。 またたび入りのねずみを、ママが買って来てくれたときがある。 桃が握り締められるくらい小さな白鼠。 桃が、 『可愛い可愛いねずみちゃん。』って、大事そうにおいらに差し出した。 おいらはふんふん匂いをかいだ。 とたんにふわふわってしちゃうにおいがしたんだ。 これは何の匂いかな? おいらなんだかいい気持ち。 ねずみの匂いをもっとかいでみた。 おいらはぽわ~っとしてきちゃった。 おいらはねずみを抱きしめてペロペロかんじゃった。 なんだか体が浮いちゃう気がして、おいらは寝そべって、ねずみを抱きしまたまま、ごろごろ転がった。 おいらなんだか変な気分。 おいらはますますねずみをなめた。 舐めれば舐めるほど、匂いは強くなって、おいら堪らなくなってねずみをかじかじした。 とたんに桃のおっきな泣き声。 『うわ~ん。こにゃんがねずみちゃんを食べちゃった。』 おいらがびっくりしてねずみを見ると、 ねずみは真っ二つになってしまっていた。 おいらは桃のほっぺについた涙をぺろり舐めた。 涙はとてもしょっぱくて、おいらそれを舐めたらなんだか泣きたくなった。 ママが気がついて桃をダッコして慰めていた。 おいらはにゃ~にゃ~鳴いた。 桃もわんわん鳴いた。 ごめんね桃。 ごめんねいい匂いの白鼠。 おいら桃のために、 いつか本物の白鼠を捕まえてくるよ。 今度は食べたりしないよ。 ほんとだよ。 黒いぴかぴかビーズのようなおめ目。 ピンクの花びらみたいなお鼻。 長くてふわふわのしっぽ。 どこにいるのかな? 桃の白鼠。 act.27『忍者猫』 に続く |